ソウルフード
2024.11.22

北海道のソウルフード「ザンギ」を札幌で絶対に食べるべき理由

北海道の居酒屋に必ずあるメニューが「ザンギ」。鶏の唐揚げに限りなく似た料理だが、「ザンギと唐揚げは別物!」と熱弁する道産子も多い北海道のソウルフードで、観光客にも人気のメニューだ。札幌でザンギといえば真っ先にその名が上がる「中国料理布袋」エリアマネージャーの相馬歩さんにザンギの魅力について、札幌を拠点に活動するザンギライターのふーみん氏に市内のおすすめ店について、それぞれお聞きした。

Photo: Ryoichi Kawajiri / text: Masaki Narita

札幌市民が熱愛する大きなザンギは
市電通り沿いのレトロな町中華にあり。

札幌の市電がのんびりと走る道路沿いに、なんともレトロな店構えの町中華がある。ランチタイムには行列の絶えない店の名は「中国料理布袋」。女性の拳くらい大きく、おいしいザンギで知られる有名店だ。ザンギの語源には諸説あるが、中国の唐揚げ「炸子鶏(ザーズージー)」が訛ったものという説が有力とされている。

年季の入った佇まいや庶民的な雰囲気も大好きという熱狂的なファンが多い。

忙しい店内を切り盛りする相馬歩さんは函館の出身。親戚筋が経営している布袋に入社したのは約10年前のことだ。「中華料理店として開業したのが1997年のことで、当時の看板メニューはマーボーメンだったそうです」。ザンギが一躍人気メニューになったきっかけを聞くと「酸味が効いた特製ダレをザンギにつけて出すようになってから、急激に注文が増えたそうです」。ちょっとした工夫が、その後の店の方向性を大きく変えた。

若きリーダーとして布袋の味を守り続けている相馬歩さん。

客の9割が注文するザンギの秘訣は
大きな鶏肉にしっかり火を通す三度揚げ。

「布袋といえばザンギ」と言われるほどの人気の秘密は、1個90g前後というその大きさに加え、外はカリッと香ばしく中は驚くほどジューシーで柔らかい食感にある。これは、異なる温度の油で三度揚げすることで生まれる。「まず中温で衣を固めて、低温でじっくり内部まで火を通し、最後に高温でカラッと仕上げています」。この手間こそが、札幌市民を虜にするおいしさの極意なのだ。

下味には中国酒「ラオチュウ」を使い、丁寧に衣をつける。

3種類の温度のフライヤーを駆使して揚げられるザンギ。

来店客のザンギのオーダー率を聞いてみたところ「9割は超えていると思います」。ザンギ定食やセットメニューはもちろん、単品で1個から注文できるので、麺料理などにザンギをプラスする客も多いそうだ。「みなさん、うちに来るとザンギのスイッチが入っちゃうみたいで」と笑う相馬さん。ちなみに、本店だけで多い日には1,400個ものザンギが出るという。「支店や系列店を合わせると大体1日3,000個くらいですね」というから驚く。

鶏肉は馴染みの業者からトン単位で仕入れるという。

活気あふれる店内できびきびと働くスタッフたち。

「うちのザンギはタレをつけるのが前提なので、味は薄め。マーボーとの相性もいいんですよ」と相馬さん。タレをつけてさっぱりと食べるのもいいが、ピリ辛のマーボーをからめて食べるのもいい。どちらにしても、ここのザンギは食べらさる(ついつい食べてしまう)のだ。

おすすめのザンギB定食は税込1,190円(取材時価格)

Information

中国料理布袋本店
住所:札幌市中央区南1条西9丁目1-3
TEL:011-272-4050
営業時間:ランチ 11:00〜14:30(L.0)、ディナー 17:00~21:00(L.O)22:00閉店
定休日:不定休(サイトで毎月案内)
https://zangihoteigroup.com/

札幌のザンギライターが太鼓判を押す
3店舗のザンギをご紹介。

ザンギの発祥は釧路で、それが北海道各地に広まったと言われている。中でも名店が多い札幌で活躍する「ザンギライターふーみん」氏に、市内でおすすめの店をご紹介いただいた。ピーク時で年間2,000個のザンギを食し、ローソンの「からあげクン北海道ザンギ味」を監修したザンギ通だ。最初に紹介してくれたのは、地下鉄大通駅直結の昭和ビル地下1階〈大衆酒場 俺流〉。「ここの名物は丼に山盛りのザンギで、ボリュームだけではなくしっかりした味付けが特徴です。ビールが1杯220円(税込)なので、ザンギと一緒についつい飲んでしまいますね」とふーみん氏。同じフロアに本丸と二の丸の2店舗があり、どちらでもザンギが食べられる。「地下鉄直結で行きやすいし非常にリーズナブルなので、観光客には特におすすめです」。

ゴロっと大きなザンギが7個も入ってなんと税込660円(取材時価格)

二の丸では、2,200円(税込)で満腹&べろべろの「にせんべろ」が大人気。

おすすめの2店舗目は、地下鉄東西線西18丁目駅から徒歩3分の〈KITCHEN 鑓水商店〉。「ここでぜひ食べてほしいのは、オリジナルソースを使い、揚げても焦げないように工夫を重ねたソースザンギです」とふーみん氏。定食メニューに、醤油味のオリジナルザンギ、塩ザンギ、ソースザンギの3種類がすべて食べられる「ザンギ食べ比べ定食」もあるのがうれしい。また鑓水商店は、プロサッカーチーム「北海道コンサドーレ札幌」のリレーションシップ・パートナーでもあり、ファンはもちろん選手も顔を出す。「土曜限定の赤黒ザンギ定食もおすすめです。クラブカラーの赤と黒にちなんだ、ヤンニョムの赤ザンギとイカスミの黒ザンギ、これも鑓水商店でしか食べられないレアなザンギです」。

3種類のザンギが2個ずつ入った「ザンギ食べ比べ定食6個入り」は税込1,050円(取材時価格)

札幌医科大学にも近く、医師の卵たちもお腹を満たそうとやってくる。

最後に紹介してくれたのは、すすきのの〈グランド居酒屋 富士〉。創業59年の老舗で、地元サラリーマン御用達の人気店だ。看板メニューの「富士ザンギ」は、なんと累計で250万個以上を売り上げたという。「カラッと揚がったサクサク食感とスタンダードな味わいで、ザンギの入門編にはぴったりです」と語るふーみん氏がザンギ好きになったきっかけは、母親の手作りザンギだった。「各家庭にそれぞれの味があり、お店によってもいろいろな味付けがあります。山わさびやチョコで味変するのもアリですし、そんな自由なところがザンギの一番の魅力かもしれません」。ふーみん氏が「バリエーション豊富で食べ飽きることがない」と熱弁する、シンプルなようで奥が深いザンギの沼に札幌ではまってみるのも面白そうだ。

地元客から「これぞザンギ!」と絶賛される「富士ザンギ」は税込700円(取材時価格)

酔客を誘う赤い看板が目印。団体客も受け入れ可能な文字通りの巨大居酒屋だ。

Information

大衆酒場 俺流
住所:札幌市中央区大通西5丁目8 昭和ビル地下1階
TEL:011-210-8228
営業時間:ランチ 11:30〜13:30、ディナー 17:00~0:00
定休日:日曜・祝日

KITCHEN 鑓水商店
住所:札幌市中央区南1条西19丁目1-251 ベイスランスウォーター1階
TEL:011-631-8134
営業時間:ランチ 11:00〜15:00、ディナー 17:00~22:00 ※土曜日17:00~21:00
定休日:日曜・祝日
http://yarimizu-shoten.site/

グランド居酒屋 富士
住所:札幌市中央区南5条西4丁目 富士会館ビル
TEL:011-511-7131
営業時間:17:00~23:30(週末・祝前日は~翌1:00)
定休日:日曜・祝日
https://www.grand-fuji.co.jp/

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