札幌と酒
2023.10.27

明治43年創業の酒屋に聞く、いま、札幌で飲むべき“酒”とは

札幌観光の楽しみといえば、「うまいもの巡り」。そして、そこに欠かせないのが、うまい酒だ。飲みニケーションが大好きな札幌っ子たちは、いま、どんなお酒に夢中なのか? 再開発で盛り上がるJR苗穂駅前で4代続く酒屋〈小飼商店〉の店主に、いま、札幌で飲むべき酒について指南してもらった。

photo: Yoshitaka Morisawa / text: Tamaki Sugaya

今、札幌はクラフトビールが熱い!

JR札幌駅のひと駅隣、JR苗穂駅前に杉玉を下げる〈小飼商店〉。明治43年に米穀店として札幌に創業し、昭和20年代から酒の取扱に注力。現店主・4代目の小飼英祐さんに代替わりしてからは、全国各地から集めた個性豊かな日本酒を中心に、北海道産の日本酒、ワイン、クラフトビールなどを取り揃える。5年前には店舗を改装し、セルフで角打ちも楽しめるようになった。「うちは個性的なお酒が多いので、まずはちょっと飲んでもらって、気に入ったら買っていただければ」と小飼さん。北海道産のソーセージやチーズなど、魅力的なアテも揃えている。

角打ちでは、クラフトビールをタップで提供。グラス小400円、大700円(写真は大)。「チーズ3種盛り合わせ」650円とともに。

そんな小飼さんに、「札幌の酒カルチャーのいま」を訪ねると、意外にも第一声は「クラフトビールが熱いですね」と、返ってきた。ここ数年、全国的にブームを巻き起こしているクラフトビールだが、「札幌は特に熱狂的なファンがクラフトビール文化を盛り上げています」と小飼さん。札幌は、日本でも早い時期からビールの製造を始めた土地として知られる。そんな開拓のスピリットが、今も地元のビールファンたちをかき立てるのかもしれない。市内には続々とブルワリーが誕生している。「札幌をクラフトビールのまちにしようという機運も高まっています。個性的なブルワーや腕のいいブルワーが多く、コアなファンたちの応援ムードが熱いんですよ」。

左/創成イーストエリアで醸造する〈月と太陽〉。右/2023年に桑園エリアで誕生した〈ストリートライトブルーイング〉。

道内各地のクラフトビールもラインナップ。

〈月と太陽〉や〈ストリートライトブルーイング〉のように、醸造施設にタップルームを構えるブルワリーも増えている。「ススキノや狸小路、創成イーストなどにはバラエティ豊かにクラフトビールを取り揃えている飲食店も多いので、ファンの方は足を運ぶと楽しめますよ」と小飼さんは推す。

札幌市内ではワイナリーも大健闘!

それでは、札幌のワインはどうだろう? 「ワインもいいですねぇ〜。〈八剣山ワイナリー〉や〈さっぽろ藤野ワイナリー〉 、〈ばんけい峠のワイナリー〉に加えて、2020年に創業した〈さっぽろワイン〉は早くも高評価を得ています。これからまた新しいワイナリーが市内にできるという情報もありますので、札幌のワイン文化もまだまだ盛り上がりそうですね」と、話しながら小飼さんがおすすめしてくれたのは、市内にキャンパスがある北海学園大学の工学部が醸造した〈hguwine〉や、旭川の米農家が作るイチゴを〈八剣山ワイナリー〉が醸造したイチゴのスパークリングワイン、〈さっぽろワイン〉の代表作。どれも食事に合わせやすいすっきりとした飲み口が特徴だ。

左から〈hguwine〉の赤・白、〈八剣山ワイナリー〉から「ストロベリー スパークリング ワイン」とノンアルコールの「ストロベリー スパークリング」、〈さっぽろワイン〉の「ケルナー」と「ヤマ・ソービニオン」。

まずは角打ちで味わって、好みを見つけるのも

札幌午後3時から営業する〈小飼商店〉の角打ち。早い時間には観光客、夕方になると仕事帰りのサラリーマンや女性の一人客がやって来る。観光客なら、ここでちょっと飲んで好みの味を見つけてから、市内の繁華街に繰り出すという使い方もありだろう。〈小飼商店〉の角打ちでは、セルフで燗を付けることができる。好みの温度になったら、コップに注いでぐびっと。寒い冬は燗酒が五臓六腑に染みわたる。

セルフで燗を付け。日本酒は1杯300円〜。

小飼英祐さん。

お酒のラインナップが充実しているおすすめの飲食店を小飼さんに尋ねると「そりゃあもうたくさんありますよ」と苦笑い。1店や2店には絞りきれないほどあるという。札幌市内には、すすきのをはじめ、創成イーストや狸小路、円山界隈と、飲み歩きが楽しめるエリアがたくさんあって、それぞれにいいお店がいっぱいあるんですよ」と小飼さん。
最後に、“これからの札幌の酒”について聞くと、「いま、澄川で〈紅櫻蒸留所〉がクラフトジンを造っていますが、これからはこうした蒸留酒のブームが来るような気がしています。また、地酒〈千歳鶴〉を醸造する〈日本清酒〉があり、豊平川の伏流水を仕込み水に使い、札幌のど真ん中で日本酒を醸している。「女性の杜氏さんが頑張っている酒蔵です。希少価値も高いので、出合ったら飲むべきお酒と言えるでしょう。2023年に64年ぶりとなる新蔵が完成し、札幌のお酒は、ますます元気、楽しくなりそうですよ」と、小飼さんは期待を膨らませた。

歴史ある「千歳鶴」の酒蔵が64年ぶりに新設。
工場見学も募集中

「千歳鶴」で知られる日本清酒株式会社は、ルーツを辿ると開拓時代にまで遡る、札幌市内唯一の由緒ある酒蔵。豊平川の伏流水を使って、普通酒からプレミアムな日本酒まで、豊富なラインナップを誇る。そして、今年は64年ぶりに酒蔵を竣工し、工場見学も始まった。市内中心部にある本社には酒蔵の他に「酒ミュージアム」という直営店もあり、ここだけでしか買えないお酒もあるので要チェックだ。


工場見学
住所:札幌市中央区南3条東5丁目2番地
営業時間:10:00〜16:00(平日のみ)
※工場見学は5営業日前までにHPから事前予約。
※団体様のみのご予約となります(10名様程度)
詳細・申込はこちら


「千歳鶴 初仕込 純米吟醸 きたしずく」
2,200円(720ml ※数量限定、なくなり次第終了)
64年ぶりの新醸造棟で初めて仕込んだ記念すべき1本。北海道産の酒作りに適した米「きたしずく」を100%使用。爽やかな香りと、ほのかな甘み、酸味のバランスが秀逸で、お刺身にも合うが、肉料理にも合う。

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