甘い物好き
2023.10.31

札幌は小豆もうまい!甘党カメラマンが偏愛する、売り切れ必至の豆大福3選と変わり大福を少々

札幌で活躍するカメラマン・モリサワヨシタカの趣味は筋トレと甘味探訪。そんな彼が仕事の合間に好んで食べているというのが豆大福。「腹持ちが良く、低脂質。エネルギー補給には最適」らしい。中でもリピート買いしている店は、地元では売り切れ必至の人気店。「本当は教えたくない」というベスト3と、偏愛する変わり大福についてたっぷりと語ってもらった。

photo: Yoshitaka Morisawa / text: Aiko Ichida

僕が選んだ豆大福ベスト3!豆大福は、それぞれの店の個性とこだわりがぎゅっと詰まった究極の和菓子だと思う。

仕事の合間や筋トレ前のエネルギーチャージに「豆大福」最強説

プロのアスリートがトレーニングの前に和菓子、特にあんこやお餅のお菓子を積極的に食べるという話はよく知られている。僕もそうだ。筋トレが趣味ということもあるが、カメラマンの仕事も体力勝負、「食」には少しこだわりを持っている。付き合い程度にお酒も嗜むが、基本は甘党。地元の情報誌の仕事も多いので、スイーツに詳しい編集者やライターさんから情報をもらい、「あの店のコレが美味しい」と聞けば足を運ぶ。

札幌にはうまい大福がたくさんある。餡(小豆)、黒豆、もち米などの原料は全部北海道内で採れるし、いずれも全国的にみて最高品質。とはいえ、最後はやっぱり職人の技だなぁとも思う。同じ原料を使っていても、それぞれの店によって味も形も食感もまったく異なるのだから、本当に奥が深い。
そういうわけで、禁断症状が出てしまうほど愛してやまない3つの豆大福を選出した。売り切れ必至で午後に行ったら、すでに完売していた……ということも少なくないので要注意。


ささや大福(円山)

甘さと塩みのバランスが絶妙。
豆大福を上品な和菓子に引き上げた、〈ささや大福〉の「塩豆大福」

「早い時間に行かないと、売り切れちゃう」との噂を耳にして、午前中の仕事終わりに立ち寄ったのが最初だった。お昼前だったが、並んでいる大福の数は少なくなっていて、すでにラッキーな気分。まずは定番の「塩豆大福」を購入し、さっそく車の中でいただいたのだが、その時の衝撃は今も忘れられない。豆大福なのに、まるで高級菓子を食べているようだった。上品な甘さの餡と豆の塩加減、しっかりとした歯応えを感じられる黒豆と餅、それぞれが「美味いだろ!」と主張しているにもかかわらず、見事に調和している。「絶妙じゃないか……」。

塩みのある黒豆とほんのり甘い餅、素朴な味わいの中にふくよかな甘さが広がる餡。「これぞ豆大福!」という逸品。

小豆は北海道十勝産、もち米と黒豆は空知北部の北竜町産。中でも豆は幻の黒大豆といわれる黒千石大豆を使用するなど、店主自ら生産者を訪ね、「ここ」と決めた農家から取り寄せるこだわりよう。そう、この店の味は店主・中村さんのストイックな情熱によって作られている4時間ほど仕上げているという粒あんと、こしあんから選べるが、一粒一粒が際立ち小豆の風味をしっかりと感じられるので、僕は断然、粒あん派。もちろん防腐剤、保存料はいっさい使われていないから、その日のうちに食べなければ硬くなってしまう。
ささや大福の「塩豆大福」はバランス感覚に優れた優等生。僕はすっかり心を奪われてしまった。

INFORMATION

ささや大福「塩豆大福」 220円
住所:札幌市中央区大通西24丁目1-26 アッシュマルヤマ1F
TEL:011-624-7751


白谷(医大・西18丁目エリア)

ねばりのある餅と大粒の黒豆が特徴。優しい“温度”が味わいを一層ふくよかに。
〈餅菓子商 白谷〉の「十勝黒豆大福」

「餅が艶やかで、手に取るとしっとり密着する」、それが第一印象だった。小ぶりなわりに豆が大きく、食べ応えは十分。餡はこしあん一択だ。素朴な味わいの中に丁寧に作られた職人の“温度感”のようなものが伝わってくる、どこか懐かしい……それが〈餅菓子商 白谷〉の十勝黒豆大福だ。
餅は名寄産の「風の子もち」を使用。時間が経ってもやわらかく、硬くなりにくいことで知られているもち米の品種だが、一口食べると、その通り。ねばりが強く、モチモチとした食感で餡と絡み、口の中に自然な甘さが広がる。
黒豆は、十勝の在来種「いわいくろ」という品種らしい。これが硬すぎず、やわらかすぎず、ちょうどいい食感。ふっくらと炊き上げることで、豆本来の強い甘みが引き出されている。餡はしっかりと甘いが口当たりが良く、すぅーっと口の中で溶けていくので後味が優しい。

「十勝黒豆大福」は〈白谷〉では不動の一番人気。豆本来の味の甘さとなめらかな餅とあんこが、口の中で溶け合う瞬間がたまらない。

〈白谷〉はやはり餅菓子商(もちがしあきない)というだけあって、餅が美味い。見た目も食感も味わいも、餅が主役で豆と餡はその美味しさを引き立たせる名脇役を演じているようにも感じる。幸せな気分にしてくれるのが〈白谷〉の大福。とにかく優しくて、温かい。

INFORMATION

餅菓子商 白谷「十勝黒豆大福」 170円
住所:札幌市中央区南3条西17丁目 西17ホッカイビル1F
TEL:011-633-9550


元祖 雷除志ん古(西野)

石臼と杵でついた餅に包まれ、どっしり。
行列ができる老舗、〈元祖 雷除志ん古〉「豆大福」

安政5(1858)年創業の老舗もち店〈元祖 雷除志ん古(がんそ かみなりよけしんこ)〉。週末には開店前から行列ができる店。家の近所なので、仕事終わりによく買っているが、毎日食べても飽きないのでは……と思うほど、しみじみおいしい。食後に「やっぱり長く愛されているのには理由がある」と妙に納得し、150年前に札幌に移り住んできた開拓者たちもこの大福を食べたのか、と思いを馳せるのも豊かな時間。
餅はもち米を石臼と杵でつく、昔ながらの製法。どっしりとした重みのある大福は、サイズもほかと比べてやや大きめ。コシが強く、ねばりのある餅の中にはあんこと豆がぎっしり詰まっていて、一口食べるたびに口の中でしっかりまとまる感じが絶妙。食べ応えも十分だ。

ずっしりと大ぶりの豆大福。もっちりとした生地、ほどよい塩みによって甘さが引き立つ餡、豆の食感……創業当時から変わらぬ味が今も多くの人に愛されている。

北海道産朱鞠あずきを使った餡は、上品な味わいの中に感じられるほどよい塩みが特徴。おそらく気温や湿度、またその時に仕入れた素材の状態によって微妙に塩の分量も調整しているはず。すっきりとした甘さが後を引く、本当にちょうどいい“塩梅”だ、といつも思う。あんこはこしあんと粒あんの2種類。手間を惜しまず、昔ながらの製法で丁寧に作っているため、お昼頃には売り切れてしまうことも多いが、この味、百聞は“一食”にしかず。

INFORMATION

元祖 雷除志ん古「豆大福」 180円
住所:札幌市西区西野4条3丁目4-1
TEL:011-671-3644

【番外編】

“映え”はしないが、
美味なる変わり大福ベスト!

僕は大福に見た目の“華やかさ”はあまり求めていない。朴訥な佇まいながら、職人のチャレンジ精神が生み出した新しい味との出会いこそ、醍醐味。目新しさに驚く瞬間も楽しいけれど、今回はいつの間にか僕の中で定番になっていた2つの店の変わり大福を計3つ、番外編として紹介しよう。

1.「レアクリームチーズ大福」〈餅菓子商 白谷〉(医大・西18丁目エリア)

弾力のある餅の中からとろりと溶け出すように顔を出すクリーミーなレアチーズは、ひとたび口にするとほどよい酸味と濃厚な香りがふわっと鼻を抜けていく。洋菓子の定番素材を和菓子の主役にした職人の心意気に感服。ちなみに辛党(酒好き)の編集者への手土産に持っていったら「ワインに合う」と言っていた。


コク深くて、濃厚なレアクリームチーズ大福。甘酸っぱいレアチーズがとろりと口溶けていく。1個170円。

2. 「ピスタチオ大福」と「コーヒー大福」〈もち工房 みやび〉(新川)

餅菓子の種類が豊富で季節限定の大福なども楽しみにしているが、僕の中では「〈みやび〉に行ったら、外せない」2種である。

鮮やかなグリーンのピスタチオ大福は、ローストしたピスタチオが練り込まれた生地の中に、試作を重ねて完成させたという自家製ピスタチオあんが入って風味豊か。香ばしいナッツの香りと食感、塩みのバランスもいい。生クリームなどを使用せず、和菓子として勝負しているところも僕好みだ。

コーヒー大福は見た目の通り、コーヒー風味の餅にたっぷりの粒あん。口いっぱいに広がるほろ苦いコーヒーの香りが時々無性に恋しくなって、「みやびに行こう」となる。


餅からも餡からもローストしたピスタチオの食感と風味をしっかりと感じられる、ピスタチオ大福1個195円。甘さは控えめ、ほろ苦いコーヒー大福は大人の味。1個150円。

INFORMATION

もち工房 みやび
住所:札幌市北区新川4条6丁目1-10
TEL:011-788-2171

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