夏まつり
2024.07.19

約1カ月間のロングラン開催! さっぽろ夏まつりで北国の夏をとことん味わおう!!

毎年7月中旬から8月中旬にかけて、札幌の中心部では「さっぽろ夏まつり」が開催される。「福祉協賛さっぽろ大通ビアガーデン」「北海盆踊り」「すすきの祭り」「狸まつり」の4つのイベントを総称した、札幌の夏を彩る風物詩だ。今回は、北海盆踊りとすすきの祭りに深く関わっている和太鼓奏者の荒川寿彦さんに、さっぽろ夏まつりの魅力と楽しみ方についてお聞きした。

Photo: Ryoichi Kawajiri / text: Gentaro Kodama

札幌のど真ん中で行われる盆踊りは、
生唄と生伴奏のライブ感が魅力!

和太鼓奏者と民謡伴奏者、和太鼓や民謡太鼓の講師でもある荒川寿彦さん。子供の頃に大通公園の盆踊りを見て櫓で太鼓を打つ姿に憧れを抱き、中学に入ると民謡伴奏者の初代・瀬川実厳(じつげん)氏に弟子入りした。「小学1年の頃から町内会の太鼓を打っていて、高校1年で念願の大通公園の櫓に上がれたんですよ」と語る荒川さん。地元で「新琴似太鼓」という団体を立ち上げたのが16歳の時だというから驚く。「16歳で代表というのはちょっと世間体もあるので、父親に代表になってもらって、僕が事務局長という肩書きで。その当時から作曲もしていますね」。

そんな荒川さんが太鼓を叩いているのが、大通西2丁目で開催される「北海盆踊り」だ。1954(昭和29)年の第1回さっぽろ夏まつりから開催され、北海道内でも指折りの規模を誇る盆踊りとして広く親しまれている。「こんな大都市の中心部で毎年盆踊りをやっているというのは、すごいことだと思うんですよ。観光スポットの時計台やテレビ塔からも近い会場ですし、何といっても今年で70年の歴史ある盆踊りですからね。市民にも観光客にも、このすごさをもっと知ってもらいたいんです」と、荒川さんの口調も熱を帯びる。

CDやカセットテープで曲を流す盆踊りも多いが、北海盆踊りは生唄と生伴奏だ。荒川さんは、唄い手が唄いやすい太鼓を心がけているという。「その時の唄い手さんの調子にもよるし、唄い手さんの癖もあるので、そういうところにも気を配って打っています」。櫓の上の段に太鼓があって、唄い手は下の段で唄っている。「だから、太鼓が常に一定のリズムを刻んで、大きな音で引っ張っていかないと。唄い手さんに引っ張られてしまうとダメなんです」。盆踊りの太鼓は、聴かせるためではなく、踊ってもらうために打つ。会場の空気感なども含めた、まさにライブパフォーマンスなのだ。

子供と大人の踊る時間が分かれている!?
シンプルでウェルカムな北海道の盆踊り

北海道の盆踊りは、夕方の早い時間の「子供の部」と、その後の「大人の部」の二部構成が多く、「北海盆踊り」も同様だ。「昔は盆踊りの歌詞って、ちょっと子供には聞かせられないような内容のものだったんです。それで当時の北海道教育委員会が、子供が健全に盆踊りを楽しめるようにと、子供盆おどり唄を作ったわけです」。道民ならお馴染みの「チャンコチャンコチャンコ……」というフレーズだが、荒川さん曰く「あれはチャンコではなくシャンコです。馬の鈴の響きを表現したものと言われているんです」。音源がカセットテープのみで、それも1950年代に録音されたものが今も多くの会場で使われている。そのため、当時の録音の音質や何度も流すうちにテープが劣化したことで、「シャンコ」が「チャンコ」に聞こえるようになったのではないかと思われる。

大人が踊る「北海盆踊り」は、「北海盆唄」と「北海よされ節」という歌で構成されてはいるが、同じ曲を続けて、非常にシンプルな振り付けでずっと踊るのが特徴だ。「あんなシンプルな盆踊りはほかにないんじゃないですかね。誰でもすぐに覚えられるから、道外の人も外国人の観光客も、すぐに踊りの輪に入れるんですよ」。海外からの観光客が浴衣を着て盆踊りに参加するのも、今では珍しくない光景になった。「櫓の上から見ていても、会場いっぱいに人がいて、みんな楽しそうに踊っていて」と荒川さんが語るように、誰でもウェルカムなのは楽しい。

期間中、19:00から21:00まで開催される「北海盆踊り」だが、荒川さんが特におすすめするのは終了間際の時間帯だ。「基本的には同じスピード感でやっているんですけど、最初はスローから始めて、徐々にスピードを上げているんです、実は。それで終わる1分前ぐらいになると、もう踊れないくらいのスピードで太鼓を打つので」。司会がそろそろ終了というアナウンスをかけるのを合図に、荒川さんがテンポをどんどん早くする。踊れなくなった参加者が立ち止まって、太鼓と手拍子で盆踊りは幕を下ろす。「これはもう最後までいないと見られません。みんなの手拍子と拍手で終わる盆踊りも、ほかにはないでしょうね」。

夏のすすきのが10倍楽しくなる!
「すすきの祭り」で盛り上がろう!!

荒川さんは、日本有数の歓楽街・すすきので開催される「すすきの祭り」とも関係が深く、祭りでは札幌太鼓連合会の事務局長として「連合太鼓」の窓口や太鼓団体の調整を行っている。10団体が集結して行われる「連合太鼓」の中でも、特に見ておきたいのが、およそ150人で打つ「山彦(やまびこ)」という曲。北の大地を揺らすほどの迫力で、「聞いた話によると、1.5kmほど離れた札幌駅の方まで音が響いているらしいです」というから驚きだ。「山彦」は室蘭市の白鳥大橋が完成した際にも約1,000人が合同で演奏しており、当時のギネス記録となっている。「札幌市内で100人を超えるような規模でやるのは、今ではすすきの祭りだけですね。ぜひ、全身で和太鼓の響きを感じていただきたいです」。

「すすきの祭り」の初日のメインは、華麗ないでたちの花魁が優雅に練り歩く「花魁道中」。毎年、すすきのエリアで働く女性から公募で選ばれた2名が、「夢千代大夫」「佳津乃大夫」という花魁に扮して、煌びやかな衣装を身に纏う。約30cmもの高さの下駄を履き、外八文字という特殊な足の運びで、すすきの中心部を約1時間30分かけて練り歩く様子に、遊廓があった頃にタイムスリップしたような感覚が味わえること請け合いだ。「花魁道中の前に札幌太鼓連合会の太鼓がありますから、ぜひ一緒に楽しんでください」。

ほかにも「すすきの祭り」では、いくつかの神輿が会場内を練り歩く「神輿渡御」や、YOSAKOIソーランの演舞披露も行われる。「最終日には、すすきのナイトフィーバーっていう屋外ディスコみたいなこともやるんですよ」と荒川さん。懐かしのディスコがすすきのに復活して、最高潮に盛り上がったところで祭りはフィナーレを迎える。ステージイベントも盛りだくさんな「すすきの祭り」で勢いをつけてから、名店揃いのすすきのの街に繰り出すのもいいだろう。

狸小路の「狸まつり」を楽しんだ後は、
大通公園のビアガーデンで乾杯しよう!

開拓使時代から続く、北海道最古の商店街「狸小路」のアーケードがカラフルな装飾に彩られるのが「狸まつり」だ。毎年恒例の、一夜限りのナイトバーゲンを楽しみにしている市民も多い。また、まつり期間中に行われる「狸八徳例大祭」では狸太鼓が演奏され、子供みこしと狸神輿渡御が練り歩く。昨年までは狸まつりとはほとんど関係がなかった荒川さんだが、狸小路で太鼓の教室を開いたこともあり、今年は祭りを見る機会が増えそうだという。「狸小路は、昔とずいぶん様変わりした印象があります。飲食店も増えてきましたし、外国人や若者が多い活気のある街になったなと。僕も狸まつりで狸小路の新しい魅力を知ろうと思います」。

そして、札幌市民が毎年の開催を待ち焦がれているのが「福祉協賛さっぽろ大通ビアガーデン」だ。実は札幌はビールの年間出費額が全国1位! それほどビール好きの札幌だからか、ビアガーデンのスケールもすごい。大通公園にサントリー(5丁目)、アサヒ(6丁目)、キリン(7丁目)、サッポロ(8丁目)という大手メーカーが1丁目ごとに会場を構え、さらに10丁目に世界のビール広場「World Beer Square with Hokkaido」、西11丁目に札幌の姉妹都市ドイツ・ミュンヘンの直輸入樽生ビールが飲める「札幌ドイツ村」が登場する。札幌の中心部を東西に横切る大通公園の大半がまるごとビアガーデンになる迫力と興奮は、行かないと味わえない札幌の夏の醍醐味だ。「今日はキリンに行こう、今日はサッポロにしようみたいな感じで、いろんな会場に行けるのが面白いと思いますし、各会場でおつまみやフードメニューの趣向を凝らしているのも魅力です。今年は何回行けるかなぁ……」と、荒川さんもビアガーデンを楽しみにしている。どこかの会場で荒川さんに会ったら、ぜひ声をかけて乾杯してみては?

INFORMATION

さっぽろ夏まつり
 
福祉協賛さっぽろ大通ビアガーデン
会期:2024年7月19日(金)〜8月14日(水)
会場:大通西5~8、10、11丁目

北海盆踊り
会期:2024年8月11日(日)〜8月16日(金)
会場:大通西2丁目

狸まつり
会期:2024年7月19日(金)〜8月16日(金)
会場:狸小路商店街(1~7丁目)

すすきの祭り
会期:2024年8月1日(木)〜8月3日(土)
会場:すすきの

公式サイト:https://www.sapporo.travel/summerfes/

Profile

荒川 寿彦[二代目瀬川実厳](和太鼓奏者)
あらかわ・としひこ/札幌在住の和太鼓・民謡太鼓の奏者として太鼓の普及に努めながら、和太鼓をもっと身近な楽器にすべく講師としても活動。各地で教室を展開している。2012年に日本民謡鳴り物実厳流二代目家元を襲名。2014年に札幌文化団体協議会芸術選賞受賞。2018年同協議会文化奨励賞受賞。

この記事をシェアする
  • LINE