さっぽろ散歩
2025.02.07

旅先だからこそ気兼ねなく楽しめる、昼飲みにおすすめの3軒。

旅先での昼飲みは、日常からの解放感と少しの背徳感も含めて、普段真面目に働いている自分へのご褒美。暖かい季節は、ビアガーデンなど外で昼飲みを楽しめる場所が多い札幌だが、通年営業となると意外と限られている。今回は旅のシーンにぜひ足を運んで欲しいスポット3選を紹介する。

Photo:Yoshitaka Morisawa / Text:Tamaki Soga , Aiko Ichida

File.1
タンクを眺めながら街を照らすクラフトビールを味わう
【ストリートライト ブルーイング】@桑園エリア

ビール好きなら、その土地でこそ味わえる1杯を旅の楽しみとする人も多いだろう。JR札幌駅から西へ1駅。再開発が進む桑園駅エリアに、札幌市内最大規模のブルワリー「Streetlight Brewing」はある。

タップルームから見える醸造所。タンクは、600L、1200L、2400Lと合わせて9本!

ビールを通じてつながった札幌生まれの3人が立ち上げ、2023年2月にビールづくりを開始。参考にしたのは、札幌の姉妹都市、“クラフトビールの聖地”といわれる米オレゴン州のポートランドだ。「人口60万人の都市に60以上のブルワリーがあってタップルームが併設されている。街の人が自然と集まる場所になっていて、札幌にもそういう場所をつくりたいと思いました」と、広報やタップルームを担当する宮口晃一さん。「ビールで街を明るくしたい」という意味を込め、街灯を意味する店名を付けたそう。
その願いは形になりつつあるようで、仕事帰りの近隣住民がカウンターで店員と言葉を交わしながらグラスを傾ける姿や、仲間同士で語り合う姿が見られる。子どもや愛犬連れOKという温かさも、地域に根付く理由の一つかもしれない。

倉庫を改装した店舗は天井が高く開放感がある。ポートランドに倣い、できるだけ元のものを生かし再利用することを心掛けた。

最大の魅力は、大きなタンクを眺めながら、ここでできたフレッシュなビールを味わえること。「Streetlight Brewingのビールを一番おいしく飲めるお店です」と宮口さん。ビールは常時10種類ほどあり、スッキリとした「ラガー」と、フルーティーな「エール」の2種類が定番。ほかは限定醸造で、無くなり次第新しい銘柄に変わっていく。それぞれ個性がありながらも、全般的に雑味が少なく飲みやすいのが特徴だ。「日常のどんな場面でも飲めるビールでありたいと思っているので」というがその理由。ビールマニアはもちろん、クラフトビール初心者も手に取りやすいはずだ。

ビールは左から、トロピカルな風味を感じる「ヘイズマスター」(レギュラー950円)、定番の「ラガー」(レギュラー800円)、札幌のチョコレートショップ 「SOILCHOCOLATE」とコラボした「チョコレート・スタウト」(レギュラー900円)。ナッツは、市内の飲食店「minotake」の自家製燻製ピスタチオ「森の燻し」(30g500円)。

約10種類を飲める楽しさは、クラフトビール好きならワクワクせずにはいられない。

ラベルデザインが印象的な缶ビール。自分用にはもちろん、ギフトとしても人気。札幌市内のさまざまな飲食店でも提供している。

地元客が多い一方、国内外からの旅行者も増えている。JR桑園駅には、昨年春から全ての快速列車が停車するようになり、空港に向かう前の1杯を味わう人も少なくないそう。

「最初の1杯はラガーがおすすめ。その後に香りの強いIPAを楽しむのもいいと思います」と宮口さん。

フードの持ち込みが自由なので、近くの札幌市中央卸売市場や、同店裏にある鮮魚店で購入した海鮮丼や寿司を持ち込む人も。北海道の新鮮な魚介と地元の香りが詰まった新鮮なビール、そんな札幌ならではのひとときは、至福の昼飲みになりそうだ。

Information

Streetlight Brewing
住所:札幌市中央区北10条西19丁目1-1
営業時間:月〜金曜15:00〜21:00、土・日・祝日12:00〜20:00
定休日:なし
https://shop.streetlight.jp/

File.2
新鮮な刺身や焼き魚など、食堂ならではのグルメが充実
【三浦商店/ながもり食堂】@創成イースト

大通エリアや狸小路商店街に近接し、アクセスがよい二条市場は札幌を代表する観光スポットの一つ。この市場にあって、40年近くもの間愛されている「ながもり食堂」を営むのは、海産物を取り扱う三浦商店だ。地元客も多く、そのクオリティは折り紙付き。海鮮系のどんぶりはもちろんのこと、焼き魚や特製のアテなどメニューが豊富で、札幌を訪れるたびに通う旅人や出張族の常連客も多いのだそう。「明るいうちから肴をしみじみ味わいながら、飲んでいるのは道外のお客さんが多いかな。旅の醍醐味だよね」と教えてくれたのは、店主の三浦貴博さん。

メニューは常時約30種類を用意。海鮮丼はもちろんのこと、市場内ではここでしか味わえない焼き魚を目当てにやって来る客も多い。

「サーモンハラス定食」(1,000円)、「銀ダラ定食」(1,400円)に次いで、名物「銀むつカマ定食」(1,800円)も人気。焼き魚をアテにちびちび飲んで、〆にご飯と味噌汁を…という客も多いという。

店内はコの字型のカウンター席がメインで、一人でふらっと立ち寄れるのもうれしいポイント。アルコールはビール(生と瓶あり、もちろん「サッポロCLASSIC」!)と焼酎、日本酒(常温は札幌唯一の酒蔵「千歳鶴」、冷酒は旭川の「大雪の蔵」)のみ。サワー系はなし!と潔い。

刺身イカとウニをブレンドした特製「塩辛おれの永森」(350円/手前)は、“日本酒党”にぜひ味わってほしい一品。ほかにも「いか松前漬」「ニシンの切り込み」「岩のりくらげ」など小鉢料理が充実。

料理は定番以外にも春から初夏にかけてはアスパラ、秋はじゃがバター、冬は白子(たち)など、季節の地元食材を使ったメニューも登場。“酒場感”が漂う空間で新鮮な刺身や焼き魚、旬の味覚を味わうひとときは格別だ。
ちなみに朝は7時から開店しているので、“朝呑み”もOK。ほろ酔いでホテルに戻って、軽く昼寝…そんな過ごし方もたまにはいいだろう。

ししゃも(手前)と氷下魚には日本酒がおすすめ。じっくり炙ることで小さな魚も表面は香ばしく、ふっくらとした身の旨みが口いっぱいに広がる。

Information

三浦商店/ながもり食堂
住所:札幌市中央区南3条東1丁目8
営業時間:7:00〜14:00
定休日:火曜日

File.3
作家・渡辺淳一の文学を感じながら嗜む昼酌(ひるしゃく)
【渡辺淳一文学館 喫茶コーナー】@中島公園エリア

小説『失楽園』『愛の流刑地』『光と影』など、数々のベストセラーを生み出した北海道出身の直木賞作家・渡辺淳一(1933-2014)。彼の文学と創作活動の軌跡を展示・紹介する文学館が開館したのは1998年のこと。2階には幼少期からのエピソードを物語る秘蔵品や直筆の原稿(病に伏すまでは原稿用紙に手書き、病状が悪化すると口述筆記で作品を仕上げたという)、写真などさまざまな資料を展示する常設展示室と、テーマごとに渡辺文学を掘り下げて紹介する特別展示室が設置され、ファンならずとも見どころの多いスポットだ。

2階の展示室は有料(入館料/大人500円)。渡辺淳一の文学と創作活動、生立ち、日常を紹介している。

「文学館に足を運んでいただくきっかけづくりと、付加価値としてお客さんに喜んでいただきたい…そんな思いから(昼酌セットを)始めました」と語る平岩館長。

生前、渡辺淳一氏も講演などで利用していたという、地下ホールの講義室。現在は一般に貸し出し、コンサートや音楽教室の発表会、朗読会などが不定期で開催されている。

しかし、ここで昼飲みとは少々場違いな感じもするが…。「コロナ禍に足を運んでいただくきっかけになればと、スタッフみんなで知恵を絞って始めたのが“昼酌セット”です。渡辺先生の作品に囲まれてのんびり飲むもよし、好きな本を持ち込んで読書を楽しみながら飲むもよし。静かな空間で昼飲みを楽しんでいただけたら」と話すのは、館長の平岩堅志さん。“昼酌セット”は「本日のクラフトビール」「サッポロ CLASSIC」ほかスパークリングワインや角ハイボールなどの中から2杯と、ナッツや厚切りポテチなどおつまみ1品がついて1,600円。渡辺淳一の全著作のほか、この文学館の建物を設計した建築家・安藤忠雄の作品集など、吹き抜けの天井まで壁一面に広がる書架が圧巻の図書室内喫茶コーナーで味わえる。

昼酌セットはアルコールドリンク2杯と、乾きもののおつまみ1品付き。プラス50円でおつまみをグレードアップ(枝豆・スモークチーズ・皮付きポテトから1品)できる。

安藤忠雄建築の中で「昼酌」できるのは貴重な体験。向かって右手は開架式の本棚。札幌にまつわる本も蔵書している。

タップから注がれるビールは、最大4種類から選べる。

1階の図書室・喫茶コーナー。訪れた記念に写真を撮る人も多いという、渡辺淳一氏の等身大パネルが設置されている。

雪が解けて暖かくなると、建物前にテラス席も登場する(GWころ〜)。「中島公園の横なので、犬の散歩ついでに、ランチを食べながら昼酌を楽しむ方もいます。気持ちいい風に吹かれて、軽く飲みたいなぁという時におすすめですよ」。喫茶コーナーのみの利用なら、ドリンクまたは軽食をオーダーすれば入館料は無料(2階を見学する場合は有料)。静謐な空間で、一味違う“昼飲み”を楽しんでみてはいかがだろうか。

Information

渡辺淳一文学館 喫茶コーナー
住所:札幌市中央区南12条西6丁目414
営業時間:9:30〜18:00(11〜3月は〜17:30)
※喫茶コーナーのL.O.は閉館30分前
休館日:月曜日 ※祝日の場合は翌日休館

この記事をシェアする
  • LINE