ソウルフード
2024.11.29

これを読めば絶対に食べたくなる!あなたの知らないジンギスカンの世界

北海道民のソウルフードといえば、やっぱり「ジンギスカン」だ。札幌の街では市民も観光客も、夜な夜なビールとの黄金コンビを堪能している。北海道が誇るこの食文化を次世代に残すための普及活動に取り組んでいる「北海道遺産ジンギスカン応援隊」を訪ね、その歴史を遡ってみた。

Photo: Ryoichi Kawajiri / text: Masaki Narita

味付けや肉もいろいろ
北海道ジンギスカンの歴史。

2014年に発足した「北海道遺産ジンギスカン応援隊」の会員はおよそ8,000人。事務局長の本田美穂子さんは「関東にお住まいの会員も多いんですよ」と語る。応援隊では、ジンギスカンのイベントやセミナーなどのほか、食文化としてのジンギスカンを研究している。そもそも、ジンギスカンはなぜ北海道でこんなに広まったのだろう?「北海道では昭和初期から軍需羊毛のための羊の飼育が盛んで、昭和20年代後半からジンギスカンが広まり始めました」。ちなみに、ジンギスカンの語源には諸説あるが、モンゴルのチンギス・ハンがその由来というのが今のところ有力だ。

北海道遺産ジンギスカン応援隊の本田美穂子さん。

羊がモチーフのかわいい応援隊キャラクター。

ジンギスカンが全道に知られるようになったのは昭和30年代のこと。国の種羊場(羊と山羊の飼育牧場)があった場所からその歴史は始まる。札幌市では、ベル食品が焼いた羊肉につける「成吉思汗たれ」を発売。さらに、精肉店とのタイアップでジンギスカン鍋を貸し出すサービスが大当たりしたのをキッカケに、家庭料理として急速に認知されていった。滝川市では、緬山羊組合で振る舞われたジンギスカンの味に感激した「松尾ジンギスカン」の創業者が10年がかりで研究を重ね、味付ジンギスカンの販売をスタート。市民の馴染みが薄く出足は鈍かったが、公園での花見客を相手に七輪で試食販売したところ、その香ばしい匂いも話題となり店頭でも売れるように。その後、自社レストランを展開するとともにスーパーなどを通じて販路を拡大していった。

北海道でおなじみのベル食品の“ジンタレ”は、甘酸っぱさのなかにコクのある風味が羊肉とベストマッチ。

羊肉を焼いてから付けるタレも、醤油ベースや味噌ベースなどのほか、塩で羊肉を楽しむ店も増えている。

味付ジンギスカンを漬け込むタレは、地域や店によってそれぞれ風味や味わいが異なる。

ジンギスカンには「ラム」と「マトン」があるが、これは羊の種類の違いではない。「生後1年未満の子羊の肉がラムで、2年以上の羊の肉がマトンです。ラムはマトンよりもクセがなく食べやすいので多くのお店で提供されています」。食べ慣れている道民には、羊独特のクセがあるマトンを好む人も多い。また、ジンギスカンには焼き方にも違いがある。ドーム型のジンギスカン鍋で焼くオーソドックスなスタイルのほか、最近は網で焼くスタイルで提供する専門店も増えている。

ジンギスカン鍋で焼くと下に落ちた肉の油で野菜が香ばしく焼ける。味付ジンギスカンの場合はタレの味が野菜に染み込んで、これまた美味。

網で焼くことで余分な脂が落ちるため、ジューシーな旨みが楽しめる。

ちょっと変わり種が名寄市の「煮込みジンギスカン」。戦前から羊肉が鍋料理で食べられていた名残と言われている。

ジンギスカン応援隊がおすすめする
札幌市内の3つの新店をご紹介。

広く道民に愛されるジンギスカンは一人ひとりのこだわりや思い入れも強く、「どこの店が一番おいしいか」という議論が絶えない。そこで本田さんに、札幌市内で「新店の」おすすめ店を教えてもらった。1軒目は、元祖ラーメン横丁に近い〈北海道大雪ジンギスカン 雪ノ下〉だ。「今年の6月オープンの新しいお店ですが、オーストラリアから直輸入した新鮮なお肉が絶品。他ではめったに食べられない生マトンを中心としたメニューのほか、『葱塩ユッケ』や『ロースたたき』のような珍しいメニューもありますよ」。

火力抜群の五徳を使用して肉質自慢の厚切り羊肉をジューシーに焼き上げる。

地下鉄すすきの駅から徒歩3分と好アクセスで立ち寄りやすい。

2軒目の〈士別成吉思汗 すすきの店〉があるのは、すすきのの「札幌東急REIホテル」の裏手。今年9月にオープンしたばかりだがすでに評判の店だ。「羊肉の王様・サフォークの中でも特に流通が少ないのが北海道産サフォーク。ほとんどが東京の高級店に行ってしまう希少価値の高いお肉が味わえるのは、牧場の直営店だからです」。実は日本で消費される羊肉の約7割がオーストラリア産で、北海道も例外ではない。「決して安くはありませんが、ジンギスカンの概念が変わるような食体験ができます」と本田さんの口調も熱を帯びる。

国際線ファーストクラス機内食にも採用されている国内トップレベルのラム肉。

札幌市内で士別サフォーク肉が味わえる貴重な店としてグルメの注目度も高い。

その「士別成吉思汗 すすきの店」のすぐ隣にあるのが、3軒目の〈羊肉焼肉平和園 羊匠亭〉。帯広の老舗焼肉店「平和園」によるジンギスカン・羊肉料理の専門店で、オープンは昨年の8月。「十勝地方だけに根付いている、味付けした羊肉を焼いてさらに焼いた後もタレに付けて食べる“両付け”スタイルが、札幌でも味わえます。1頭買いした羊を丁寧に手切りした肉のおいしさと一緒に、ぜひ体験してみてください」。

羊肉を知り尽くした職人が手切りしたマトンは、驚くほどやわらかくておいしい。

60年以上にわたって培った十勝の羊食文化を広めるためにすすきのに出店したという。

イベントや店舗で食して家でも食べる!
札幌でジンギスカンの虜になろう。

そんなジンギスカンのさらなる普及のため、応援隊では毎年「北海道ジンギスカンフェスティバル」を開催している。毎年5月中旬の週末、会場のサッポロファクトリーに集結した40種類ものジンギスカンが食べ比べできる。「一度にこれだけのジンギスカンが味わえる機会は他にありません」と本田さんも胸を張る。応援隊のサイトでチェックして、このイベントを目当てに札幌を訪れるのもおすすめだ。

毎年大勢の来場者で賑わう「北海道ジンギスカンフェスティバル」。

来場者の試食と投票で決まる「味付ジンギスカングランプリ」も同時開催。

また、旅の土産に味付ジンギスカンを選ぶという人も多いことだろう。「市販の味付ジンギスカンは、袋ごとひっくり返さず、ザルやボウルなどを使ってタレと肉を分けて焼くのがコツ。残ったタレは、野菜にかけて焼くと美味しいですよ」と本田さん。フライパンでも手軽にできるのが味付ジンギスカンの良いところとのこと。まずは気になる店でおいしいジンギスカンを食し、味付ジンギスカンを買って帰って家でもおいしく食べる。これが札幌の旅の「ジンギスカン二刀流」だ。

どこでもジンギスカンをおいしく楽しんでほしいと語る本田さん。

味付ジンギスカンには冷凍が多いので、持ち帰りには保冷バッグがマスト。

Information

北海道遺産ジンギスカン応援隊
https://hokkaido-jingisukan.com/
@hokkaido_jingis
@hokkaido_jingis

北海道大雪ジンギスカン 雪ノ下
住所:札幌市中央区南5条西3丁目1-2 第一ブルーナイルビル2F
TEL:011-211-0444
営業時間:17:00~00:00
定休日:日曜
予算(目安):5,000円~6,000円
https://www.htmc-group.jp/65/

士別成吉思汗 すすきの店
住所:札幌市中央区南五条西5-11 モモヤビル9F
TEL:011-522-8429
営業時間:17:00~23:00(L.O. 22:30)
定休日:不定休
予算(目安):5,000円〜7,000円

羊肉焼肉平和園 羊匠亭
住所:札幌市中央区南5条西5丁目13-1 ASIL札幌ビル2F
TEL:011-596-7882
営業時間:16:00〜24:00(L.O. 23:00)
定休日:なし
予算(目安):4,000円~5,000円
https://yoshotei.heiwaen.co.jp/

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