さっぽろ散歩
2024.03.19

札幌の朝一番は、「さっぽろ朝市」で買ってよし!食べてよし!

札幌の「市場」というと、〈二条市場〉と〈場外市場〉の2つが有名だが、実はもう一つ押さえておきたい場所がある。それが〈さっぽろ朝市〉だ。観光客向けの市場とは一線を画す、プロも通うこの市場は早耳のツーリストが必ず立ち寄る穴場スポット。いったいどんな場所なのか。さっぽろ朝市協同組合の事務局長を務める藤山秀和さんを訪ねた。

Photo: Ryoichi Kawajiri / text: Gentaro Kodama

市場直送の魚介や野菜などが卸値で買える!

〈さっぽろ朝市〉には水産物から青果、水産加工品、飲食店まで43店舗が軒を連ねる。

〈さっぽろ朝市〉があるのは、札幌の食を支える〈札幌中央卸売市場〉のすぐ隣。まだ陽が昇りきっていない朝5時にオープンし、5時15分に市場でせりが始まると、そこで仕入れた水産物や青果などが台車に乗せられて、ぞくぞくと各店舗に運ばれてくる。その新鮮さもすごいが、なにより衝撃的なのが、販売している価格だ。どれもスーパーや小売店よりも断然安いのだ。

「自分から見ても、海鮮関係は札幌の中で、ここが一番安いと思います」と話すのは、事務局長として〈さっぽろ朝市〉をとりまとめる藤山秀和さん。「ほかでは700gで1万円くらいする毛ガニも、朝市だと6,000〜7,000円で買えるんじゃないかな」。にわかに信じがたい驚きの安さである。

朝市の奥にある扉のすぐ目の前が札幌中央卸売市場。とにかく近い。

なぜそんなに安く販売できるのだろう。藤山さんに尋ねると、その理由は〈さっぽろ朝市〉の成り立ちにあるという。実は〈さっぽろ朝市〉に軒を連ねる店舗のほとんどは、“小売店”ではなく“卸業者”。元々は市場の仲買人が集ってできた場所で、それも「札幌市内の飲食店や小売店のための卸売市場だった」ため、現在も卸値に近い価格で販売されているというのだ。

飲食のプロ御用達の鮮度とおいしさ

卸売市場だったのが〈さっぽろ朝市〉と名前を変えて、一般消費者にも広く開放されたのは2006年。意外にも最近の話で、市民や観光客を受け入れるように各店舗に働きかけたのが、何を隠そう藤山さんだった。

「2006年、高齢だった前任者の代わりにと声をかけられて、自分も60歳目前でボケ防止になるかなと引き受けたんです」と笑う藤山さん。

16年前に縁あって〈さっぽろ朝市〉にやってきた藤山さん。当時は「管理人のようなことをしてくれればという話だった」そうだが、いざ来てみたら一般の人は入りにくいし、ビルの前にある駐車場も関係者以外は使えない。それではもったいないと“市民の台所”と銘打ち、「一般消費者も買える小売業として登記した」と振り返る。

一般開放されたとはいえ、業者への卸売として、品物の良さは折り紙付き。今も飲食店関係者や小売店がひっきりなしに仕入れにやってくる。藤山さんも「ぜひマグロを買って食べてみてほしい。本格的なお寿司屋の味そのもので、違いが良く分かると思います」と絶賛。札幌市民もその魅力を分かっている人が買いに来るため、お盆や年末年始などのハレの日には多くの人でごった返す。一方で普段は飲食店やホテル、小売店などの業界関係者が多く、観光で訪れる人はまだまだ少ないというから、まさに穴場ともいうべき場所だ

藤山さんもお客さんとして「帰りにぶらぶらと巡り、買い物して帰る」という。

買い方のコツは最初に全店巡ること

「水産物ひとつとっても、生モノだけを置いているところもあれば、開きモノや水産加工品と、それぞれ専門があり、得意とするモノがあります。ですから、最初に場内を一周して全体を見てもらうのが一番良いと思います。朝から揚げているかまぼこも500円くらいから買えますので、食べながら巡るのも面白いですし、どれも鮮度と質の良さが明らかで見ているだけで楽しいです。価格は、各店それほど変わらないと思いますよ」。

昆布などの乾物系の専門店もあり、おつまみ系の乾物も200円くらいから購入できる。

そして、〈さっぽろ朝市〉に来る際に、なにより最も気を付けたいのは「時間」だと藤山さんは言う。「朝市自体は11時まで開いていますが、卸が終わったら帰っちゃう店舗もあるので、できるだけ早く来た方が良い。ピークはだいたい8時ぐらいかな」。

お店にお願いすると他のお店で買った物とまとめて送ってくれる。

北海道は冬から春にかけて、毛ガニが旬を迎える季節。「特にオホーツク産の毛ガニは、流氷が運んできたプランクトンをたっぷり食べて大きくなるので、流氷が溶けた春先が一番おいしいと言われています」。春に札幌に来た際は、〈さっぽろ朝市〉で身がぎっしり詰まった毛ガニにも注目したい。

春先はエビやホッキ貝、ホタテなどの貝類も旬を迎える。

〈さっぽろ朝市〉を彩る店舗3選

鮮魚から塩干等の水産加工品、精肉、野菜、生花、惣菜、お茶、昆布、包装資材、さらには寿司店やラーメン店まで、バラエティに富んだお店がそろう〈さっぽろ朝市〉。ワンフロアに43店舗が並ぶ中から厳選して3店舗にも話を聞いた。

【やまき木村】(海産物・干物・珍味)

今も現役でお店に立つ木村さんは市場の生き字引ともいえる存在。朝市の名付け親でもある。

フロアのほぼ真ん中に位置する〈やまき木村〉は、冷凍の海産物や干物、かまぼこ、惣菜、珍味までを扱う卸売業者。青果店などの小売業者に卸しているほか、店頭でも市場で仕入れた品々を卸値で販売している。代表の木村佳充さんは〈さっぽろ朝市〉の理事長であり、1970年の卸売市場の誕生にも大きく貢献した人物。「消費者にいいものを届けたい」とこだわる目利きの良さには定評があり、なかでも珍味など乾物の品揃えは圧巻だ。

1960年から仲買人として活躍する木村さん。〈やまき木村〉は創業50年を超える札幌でも老舗のお店だ。

【タカヒロ】(鮮魚・水産加工品)

観光で来た人がリピート購入できるようネット通販も行っている。

〈タカヒロ〉は卸売と小売に加え、加工品の製造・販売も手掛ける水産物の専門店。天然の鮭や自社工場でつくるイクラ、さらにはカニやホタテといった季節の魚介など、鮮魚から干物まで幅広い商品を取りそろえ、その売り場面積は〈さっぽろ朝市〉最大を誇る。代表の髙岡浩行さんは「朝市には旬のモノはもちろん、北海道のあらゆるおいしさがすべてそろっている」といい、「一つのお店に行くよりもおトク。実は隠れたナンバーワンで、ここに敵うところはないと思いますよ」とアピールする。
@takahiroasaichi

隣には〈タカヒロ〉の別ブランドである天然鮭の専門店〈鮭蔵〉も併設している。

【北の宝】(海鮮丼・鮮魚)

澤田さんは海鮮丼のほか、鮮魚販売、自社ブランドの塩水ウニの製造・販売も手掛けている。

同じ朝市で鮮魚や活魚を販売する〈サワスイ〉の社長を父に持つ澤田昴典さんが2021年にオープンした海鮮丼が味わえるお店。一番人気はズワイガニや生ウニ、自家製のいくらなど12種類の海の幸がのった「北の宝海鮮丼」で、見た目の豪華さに加え、ネタが厚いので食後の満足度が高い。こだわりの本マグロは「冷凍ではなく、戸井産や大間産の生本マグロを使っている」だけあり、とろけるような食感が魅力で、味も濃い。ホタテは店内に水槽があり、注文が来てから活きたものを捌いて提供している。
@kitanotakara

看板メニューの「北の宝海鮮丼」2,300円はもちろん、生本マグロを存分に味わえる「本マグロ丼」2,100円も絶品。

INFORMATION

さっぽろ朝市
住所:札幌市中央区北12条西20丁目1番20号 丸果ビル1階
TEL:011-643-4090
営業時間:5:00〜11:00 ※店舗により異なる
定休日:日曜・祝日・水曜(祝日がある週は営業の場合あり)、その他臨時休市日あり
駐車場:9:00までは契約者専用。一般車両の駐車は制限されています。
https://www.asaichi-maruka.jp/

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