さっぽろ散歩
2023.12.11

札幌ど真ん中の都市型水族館!「AOAO SAPPORO」を10倍楽しむ方法を教えます!!

2023年7月20日にオープンした札幌の複合施設「moyuk SAPPORO(モユク サッポロ)」内の都市型水族館「AOAO SAPPORO(アオアオ サッポロ)」。地下街や狸小路と直結するアクセスの良さや、夜も22時まで営業という便利さで人気。だが、ここに注目するともっと楽しめるというポイントがいくつもあるらしい。さっそく、広報担当の佐々さんと一緒に巡ってみた。

photo: Ryoichi Kawajiri / text: Masaki Narita

すぐに中まで向かうのはNG!
まずはショップやラボで気分を高めよう。

moyuk SAPPOROの4階、AOAOのエントランスホールにはミュージアムショップがある。ここではアクアリウムグッズのほかに、オリジナルのペンギンのぬいぐるみなども売られていて、有料エリアではないので誰でもグッズなどを購入できる。入館前にミュージアム要素のあるショップで気分を盛り上げるのもいいし、新しいお土産スポットとして活用するのもアリだと思いながら眺めていると、「お疲れ様です、取材の方ですか?」と声をかけられた。

入場しなくてもお土産が買えるミュージアムショップ

AOAOでしか手に入らないオリジナルのぬいぐるみ

声の主は、われわれ取材班にAOAOを案内してくれる広報担当の佐々さん。一緒にミュージアムショップから続く入場口を抜けると、そこには「食塩」と書かれた大きな袋が積んであったり、機械とパイプでつながれた大きなタンクがあったり、間違えてバックヤードに来た!? 「いえいえ、ここが水族館の入口です。館内で使う海水を、この人工海水製造機で作っているんですよ」と佐々さん。魚たちには「マリンスタンダード」というミネラルが豊富な塩を使って海水をつくっている。ところがペンギンだけは、ごく普通の食塩を溶かした水でいいそうだ。なんかお手軽だなペンギン。

ポイントを教えてくれた広報担当の佐々遥平さん

スーパーなどでも売られている「食塩」

人工海水製造機の横には実験器具や専門書などが並んでいて、さながら理科室のような雰囲気を醸し出している。「今でこそ技術が発展し、機械によって水槽内の環境を保っていますが、昔はいわゆる理科の実験器具のようなものをつかって、手作業で環境維持に努めていたと聞いています」。ここに並べられている器具や書物は、実際に水族館で使われていたものを引き取ったのだという。AOAO SAPPOROは最新の水族館だが、先人たちの歴史を大事にしている。なんとなく通り過ぎてしまいそうなところにもそれが現れているのだ。

ここで作った人工海水を館内の水槽に循環させている

実際に使われていた器具や専門書もチェックしたい

展示のテーマや展示方法の理由を知ると、
水槽や生物の見え方が変わってくる!

AOAO SAPPOROの特徴は、「隠さずに見せる」という展示方法にある。複合施設の中にあるためスペースが限られていることを逆手にとって、通常の水族館であれば表に出さない予備の水槽や生物の食事を準備する調餌室などもあえて来館者に見せているのだ。「スタッフルームも丸見えなので、当初はスタッフから不評でしたね」と佐々さんは苦笑する。

展示前の生き物なども生活しているラボラトリー

スタッフの作業現場も来館者に公開されている

5階にある「ネイチャーアクアリウム」を手掛けたのは、BRUTUS.jpでもおなじみ、第一人者の天野尚さんが創設した「アクアデザインアマノ」。水槽の中に自然の生態系を再現するというコンセプトのもと、水草と魚の相互関係が美しい水景となって目の前に現れている。水中の世界に迷い込んだようで、じっと見ているだけで時間を忘れそうになる。水草が成長したりコケが生えたり、水槽の中は常に変化しているので、来るたびに違う水景を眺められるそうだ。

遠くから眺めても、近づいて細かく観察しても面白い

光合成で酸素を供給する水草やコケの成長も見どころ

同じ5階にあるメインエリア「ライブラリーアクアリウム」にも独自の展示テーマがある。「にょろ」「ぺったんこ」「もさもさ」など、生物の姿や形、特徴をわかりやすい表現で分類し、展示しているのだ。ライブラリーの名にふさわしく、水槽の隣にはその生物に関連する本が並べてある。中にはかなり無理があるんじゃないかと思われる本も見受けられるが、「置いてある本には必ずなにかの理由があります。そこを含めて楽しんでいただきたいんですよ」と笑顔の佐々さんに言われると、思わず納得してしまう。

水槽とパネル、関連本の3点セットで展示

「にょろ」のテーマではヘビも展示されている

地味な存在から人気者のペンギンまで、
みんなが自由に生きている様子が楽しい!

AOAO SAPPOROの展示はとにかく楽しい。訪れる来館者のほとんどが見たことがない、存在すら知らなかったような生物がフィーチャーされている。ほかの水族館では地味な存在だった、頭を下に向けて泳ぐ「ヘコアユ」も、ここではスポットライトが当たるスターとして人気を集めている。ちなみに、AOAO SAPPOROのスタッフのユニフォームが白色のため、白い服を着て水槽の前に立つと、スタッフと間違えて食事の時間だと勘違いしたヘコアユが群れで横泳ぎをすることがあるそうだ。

逆さになって静かに泳いでいる通常のヘコアユ

白い服の人が近づくと水面近くに集まってくることも

誰もが認める水族館のスターのペンギンも、AOAO SAPPOROではマイペースに過ごしている。両足で飛び跳ねて移動するキタイワトビペンギンの習性を、六角形の展示ブロックで引き出そうとしているが、彼らはその思惑通りには動かない。来館した時間はちょうどペンギンがくつろいでいる時間なのだという。最近は、斜めのブロックの上で腹ばいになるのがお気に入りとのこと。「初めは意外でしたが、自然界は常に水平な地面というわけではないので、落ち着くのかもしれませんね」。

ペンギンが飽きないようブロックのレイアウトは常に変えている

斜めのブロックに寝転んだペンギンはなかなか動かない

案内をしている途中で、「あ、これレアですよ!」と、佐々さんが突然水槽をスマホで撮影しはじめた。ハゼの仲間とエビの共生を展示している水槽だ。「このエビ、いつも石の中に隠れていて見えないんですよ。こんなに姿を現しているところ、僕も初めて見ました」。興奮ぎみに、夢中で動画を撮っている佐々さん。毎日働いているスタッフがこんなに楽しめる水族館なら、来館者が楽しめないわけがない、そう思った。

佐々さんでも見たことのないシーンが展開された

よく見ると中央にエビの姿が……これが激レア

空き時間にふらっと出かけてのんびりと過ごす、
そんな贅沢な使い方ができるのが最大の魅力!

都市型の水族館らしく、多様なスタイルで過ごせるのもAOAO SAPPOROの大きな魅力だ。6階にはパンとお酒が楽しめるパンバル「シロクマベーカリー&」があり、なんと館内は全フロア飲食可能なのでお気に入りの水槽を眺めながら味わえる。ビールを片手に、ゆらゆらと水中を漂うクラゲをぼんやり眺めているだけで時間が経つのを忘れてしまいそうだ。日中に観光を堪能したあと、夜の水族館でビールやカクテルが飲めるというのは、札幌観光の新しいトレンドとして注目されること間違いない! 2023年12月31日まで、17時以降なら何度でも利用できるデジタルパス「よなよなパス」が販売されているので、札幌に数日間滞在するならこちらもチェックしておきたい。

昼はベーカリーカフェ、夜はバルとして楽しめる

ショーケースには北海道産小麦の美味しいパンが並ぶ

クラゲがゆらめく幻想的なシーンについつい見入ってしまう

ところで、館内のAOAO SAPPOROのロゴは、それぞれ白い点の位置が違う。「あれは生物たちの生命の輝きと来館者みなさまの観察の眼がモチーフ。だからいろいろ動いているんです」。このネタをはじめ、誰かに教えたくなる情報ばかりだった。次に来る時は、連れに鼻高々で解説してやろう。

佐々さんのバックに写っていたロゴとは微妙に違う!

INFORMATION

AOAO SAPPORO
住所:札幌市中央区南2条西3丁目 moyuk SAPPORO 4階-6階
営業時間:10:00〜22:00(最終入館 21:00) ※季節によって変動あり
休館日:なし ※施設メンテナンス等により臨時休館の場合あり
入館料金:高校生以上2,200円、小中学生1,100円、3歳以上1,000円 ※時期によりチケット料金が変動
公式サイト:https://aoao-sapporo.blue/

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